ご覧いただきありがとうございます、小林です。
前編では、すでに複数のセカンドパートナーがいながらも既婚者合コンに通い続け、いつしか「出会い」そのものよりも「異性に承認される快感」のループに依存してしまっていた入江さん(44歳・仮名)の歪んだ心理に迫りました。
日常では決して得られない全能感に浸り、独自の「ハイエナ戦術」で初参加の女性をスマートに口説き落としていた入江さん。自分だけは絶対にうまく立ち回れると信じて疑わなかった彼の足元は、音を立てて崩れ去ることになります。
後編となる今回は、入江さんの身に起きた「会場での鉢合わせ事故」の生々しい全貌、そして「大人の割り切った関係」という言葉の裏に隠された、あまりにも人間臭くドロドロとした感情の正体について、さらに深く切り込んでお届けします。既婚者同士の出会いが持つ、本当の危うさがここにあります。
ーー前回は、日々の既婚者サークル活動におけるスタンスや、常連としての立ち回りについて非常に興味深いお話を伺いました。今回は、そこから発展して実際に起きたという「トラブル」について、具体的に聞かせてください。一体、どのような事件が起きたのでしょうか?
本当に今思い出しても笑えないんですけど、あの日は週末の「昼会」だったんですよ。夜のパーティーとは違って、昼会って少し落ち着いた雰囲気というか、参加者もマイルドなことが多いんです。ただ、その日に限っては、最近そのサークルが少人数開催にシフトしていたせいか、男側も女性側も、どこかで見覚えがあるような常連っぽい空気の人が集まっていました。
最初のテーブルが終わり、席替えのアナウンスが流れて二卓目に移動した時です。新しく僕のテーブルに入ってきた女性陣の顔ぶれを見た瞬間、本当に全身の血が逆流して、その場で凍りつきました。つい30分くらい前までLINEで普通にやり取りをしていて、「これから仕事に行ってくるね」と僕がメッセージを送ったばかりの女性が、そこに座っていたんです。
ーーなかなか厳しいですね…
向こうから直前に来ていたLINEには「今日はこれから子供のお迎えに行って、週末は家族サービスだからバタバタしちゃう」的なことが書かれていたんですよ。お互いに「今から仕事」「今から子供のお迎え」という日常の嘘のベールを被せ合って、お互いに「内緒の週末」を楽しんでいる真っ最中だったわけです。それが、まさか同じ既婚者サークルの、同じ時間帯の、同じテーブルというピンポイントすぎる確率でぶつかるという。
ーーお相手は、入江さんにとってどういう立ち位置の女性だったのですか?
それが一番キツいところで、やり取りをしていた方たちの中でも、特に親密で、僕自身もかなり深い感情を抱いていた女性だったんです。仮にAさんとしておきます。Aさんとはもう1年近く、月に2〜3回は必ず会っていました。既婚者同士とはいえ、かなり深い悩みも打ち明け合っていたし、お互いに「私たちは本当に特別な関係だよね」「もう良いパートナー(お互いのこと)が見つかったから、既婚者サークルみたいな出会いの場には行く必要もなくなったし、もう行ってないよ」っていう話を、つい数週間前のデートでも真顔でしていたんですよ。
ーーAさんは、入江さんがまだ既婚者合コンに参加し続けていることを、全くご存じなかったわけですね。
僕自身も「Aさんはもうサークルには行っていない」という彼女の言葉を、100%真実だと信じ切っていたんですよ。だから、自分がこっそり参加していても、現地でバッタリ鉢合わせるなんて事故は絶対に起きないだろうと高を括って、安心して戦場に出向いていたんです。
でも、フタを開けてみれば向こうも全く同じことを考えていたんですよね。「入江くんは仕事で忙しいって言っているし、もうサークルも卒業したって言っていたから、今日別のサークルに行っても絶対にバレないだろう」って。
お互いに完璧な安全圏にいると思い込んでいたからこそ、会場でガチンコで顔を合わせた瞬間の空気の破壊力は凄まじかったです。あの瞬間の、世界が一瞬で静まり返るような不穏な空気は、人生で二度と味わいたくないですね。でも、一呼吸置いてよくよく考えると、お互いに真っ赤な嘘をついてここにいるわけですから、「どっちもどっち」なんですけどね。
ーーその席での会話や、Aさんのリアクションはどのような感じだったのですか?
最初、お互いに完全に目が点になって固まりました。頭の中がパニックですよ。ついさっきまで「仕事頑張ってね」「お迎え気をつけてね」なんてLINEを送り合っていた男女が、対面の席で「初めまして」のフリをしなきゃいけないんですから。
でも、Aさんはさすがでしたね。一瞬の動揺のあと、めちゃくちゃ「普通」を装って、他の男性参加者と楽しそうに話し始めたんです。僕に対しても、初めて会ったまともな男性に対するような、当たり障りのない丁寧な態度で接してきました。
それが、逆に死ぬほど怖かった。顔はニコニコと綺麗に笑っているんですけど、目が完全に据わっているというか、1ミリも笑っていないんです。メルエムの前に立たされたウェルフィンのように決定的なワードで危機を回避できるような甘い状況じゃないですし、むしろ「ありのままに今起こったことを説明する」ことすらできない、DIOの前に立った際のポルナレフ状態ですよ。階段を登ったと思ったら、いつの間にか元の場所に戻されているような、思考がループする恐怖です。
実はそのAさんのテーブルに回ってくる前の、一卓目の時点で、僕はすでに別の新しく来た女性と調子よく盛り上がって、ちゃっかりLINEを交換していたんです。その交換する手元や、僕が新しい女性に鼻の下を伸ばしてアプローチしている姿を、Aさんはおそらく会場に入ってきた瞬間か、あるいは遠くの席からバッチリ見ていたんですよね。
生殺しのままパーティーが終わり、命からがら会場を後にして、駅に向かって歩いている時に、スマホが震えました。AさんからのLINEでした。
「入江さんって、そういう感じだったんですね」
ただ、それだけの短文です。絵文字もスタンプもない、冷徹な一言。その文字を見た瞬間、真夏なのに背筋に氷水を流されたような感覚になりました。今まで見たどんな長文の罵詈雑言よりも、その一行が一番怖かったです。
ーーその日を境に、Aさんとの関係はどうなってしまったのでしょうか。
それ以降、AさんとのLINEは完全に途絶えました。こちらから言い訳のメッセージを送る勇気も出なかったし、送ったところで何を言っても嘘の上塗りにしかなりませんから。かと言って、こちらからブロックするようなことはしていませんが、向こうからもあれ以降、一切メッセージは来ません。完全に「終わった」んだと思います。
ただ、ここからが人間の勝手なところで、僕自身、自分のついた嘘や裏切りは完全に棚に上げて、Aさんが僕に嘘をついて既婚者サークルに参加していたという事実に対して、ものすごくショックを受け、多少なりとも傷ついている自分に気づいたんです。
「あんなに仲良くしていたのに、裏ではまだ新しい男を探していたんだ」って。おそらく、Aさんも僕に対して全く同じように、裏切られた怒りと悲しさを感じていたはずです。
僕の中に、どこかで「既婚者同士の遊びなんだから、お互い様だし、割り切った関係でしょ」という甘えや免罪符のような感覚があったのは事実です。お互いに家庭を壊さない範囲で、都合よく楽しむのがこの世界のルールなんだから、深追いしちゃいけない、と。
でも、実際に当事者になってみると、人間ってそんなに器用に割り切れる生き物じゃないんですよね。特に定期的に会って、お互いのプライベートな時間を共有していると、言葉では「割り切り」と言っていても、心の奥底では普通に感情が乗っかってしまうんです。
ーー既婚者合コンやセカンドパートナーの世界って、メディアやネットでは「お互いに自立して割り切っている大人のお遊び」としてスタイリッシュに語られがちですが、実際の中身は非常に泥臭く、強い感情が動いていますよね。
本当にその通りだと思います。むしろ、僕たちみたいな中途半端に社会経験のある大人だからこそ「自分は割り切れるはずだ」「大人なんだからスマートに遊べる」と思い込んでいる分、いざ感情が暴走した時の処理がめちゃくちゃややこしくなるんです。
若い頃の恋愛だったら「付き合っている」「付き合っていない」「浮気したから別れる」っていう境界線が明確じゃないですか。でも、既婚者にはそれがない。最初から「結婚」というゴールはないし、契約もない。
だからこそ、言葉にできない嫉妬、独占欲、そして「いつ相手に見捨てられるか分からない」という不安が、表に出てこないだけで水面下にマグマのようにドロドロと溜まっていくんです。
実は、今回のAさんの件のほかにも、数年前にLINEのやり取りを継続中だった別の女性と、別のサークルの会場でバッタリ鉢合わせしたことがあったんですよ。ただ、その時はまだ数回メッセージを往復させていただけの段階だったので、「あ、どうもー」みたいな感じで、そこまでの精神的ダメージはなかった。もちろん、その時もLINEはその後音信不通になりましたけどね。
でも、今回は違った。深く関わって、信頼関係があると思い込んでいた相手だったからこそ、お互いの嘘が露出した時のダメージが致命傷になったんだと思います。
ーー修羅場を経験し、自分自身の勝手さや感情の重さに直面したわけですが、その事件以降、既婚者合コンへの参加はきっぱりとやめられたのですか?
結局また行っちゃってるんですよね。本当にやめられないんですよ、あの空間は。
以前に比べれば、さすがに自分の年齢的な限界も感じ始めていますし、同じような鉢合わせ事故を警戒して頻度はかなり減らしました。でも、やっぱりあの薄暗い会場で、新しい女性から「えー、全然40代に見えないです!」「お仕事何されているんですか?」って聞かれる瞬間の、脳が痺れるような感覚を忘れられない。自分が完全に飽きるか、あるいは本当に取り返しのつかない形で家庭にバレるまでは、きっとダラダラと続けてしまうんだと思います。
ただ、実はちょっとした個人的な事情がありまして……これ以上詳しく書くと完全に身バレしてしまうので内容は伏せますが、当面の間、少なくとも1年くらいは、物理的に既婚者サークルへの参加が絶対にできない状況になりました。
なので、ちょうど良い機会というか、自分のこれまでの8年間の活動にひと区切りをつけるための「禊(みそぎ)」のようなネタとして、今回小林さんのインタビューでお話しさせていただいた次第です。
ーーなるほど、しばらくは強制的に「お休み」の期間が入るわけですね。それが結果的に、入江さんにとって良い冷却期間になることを祈っています。本日は、普通では絶対に聞けないリアルで赤裸々なお話を本当にありがとうございました。
こちらこそ、好き勝手なクズ発言ばかりで気分を害されたら申し訳ありません。ありがとうございました。
二回にわたってお届けした、入江さんのインタビュー記事いかがでしたでしょうか。今回、入江さんのこれまでの歩みと、実際に起きた鉢合わせの修羅場についてじっくりとお話を伺っていて、私の中で非常に強く印象に残ったことがあります。それは、彼が求めていたのは女性との出会いというよりも、やはり「既婚者合コンという空間、システムそのものへの深い依存」だったという点です。既婚者合コンという場所には、日常に疲れた大人を狂わせる、非常に強力な中毒性を秘めた4つの要素が揃っています。
- 異性として扱われる(夫・妻ではなく、男・女に戻れる)
- 新しい人と出会う(予測不可能なスリルと新鮮さ)
- 承認される(自分の市場価値を再確認できる)
- 日常を忘れられる(家庭や仕事の重圧からの逃避)
これらが手軽に、かつ高確率で手に入る。この体験が繰り返されることで、最初は「誰かと出会うための手段」だったはずの合コンへの参加が、いつしか「その空間に身を置くこと自体が目的」という習慣、あるいは依存へと形を変えていくのかもしれません。ただ、どれだけシステム化された空間であっても、内側には嫉妬や独占欲、裏切られた時の傷心といった、非常に人間臭く、感情的なドロドロが渦巻いていることは覚えておきたいところです。今回のインタビューが、皆様の今後のより良きコミュニケーションの一助になれば幸いです。
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