ご覧いただきありがとうございます、小林です。既婚者サークルを長く見ているとその人間模様といいますか、その人間交差点ぶりにある種のグリードアイランド感を感じる場面が少なくありません。
今回お話を伺ったのは、初参加から実に八年以上この界隈に通い続けたある男性「ゴレイヌさん」です。体が三人分あればいいのにというようなことをおっしゃっておられましたので、それにちなんだ仮名とさせていただきました。物腰は柔らかく、聞き上手で、清潔感もある。初対面では「穏やかで誠実そうな人」という印象を持たれることが多いタイプです。
が。
その誠実そうな雰囲気とは裏腹に、四方八方手を出しまくるという、ホワイトゴレイヌでありブラックゴレイヌであり、まさにえげつねぇなという趣きなのですが、以前ご紹介した入江さんと同じく、女性側に発覚するという結末をむかえているのであります。女性の方と違って、男性はなかなかうまく立ち回れる方は少ないのかもしれません。
ーー今日はよろしくお願いします。LINEで軽くお話し伺いましたがゴレイヌさんは参加歴八年とのことで。最初はどういうきっかけだったのでしょうか。
典型的な理由ですよ。子どもが大学へ進学して家を出て、家の中が急に静かになったんです。夫婦仲が悪かったわけじゃありません。でも会話は「今日は夕飯いらない」「宅配来るからお願いね」くらい。喧嘩もしない代わりに、何も起きない。ある日、自分でも驚いたんですが、会社帰りにふと鏡を見て、イメージの中の自分の顔とえらく違っていてずいぶん老けたなと愕然としたんですよ。「あと十年もしたら、誰とも新しく知り合うことなんてないんだろうな」と思ったんです。それが妙に怖かった。恋愛がしたかったというより、人として誰かと出会う刺激が欲しかったんでしょうね。
ーー最初からすぐ馴染めましたか?
全然。一回目なんて何を話したか覚えていませんし、女性の方と連絡先交換も一人もできませんでした。でも、なんというか独身時代に感じたような熱気のあるコミュニティというんですかね。同年代でフラットにバカ話するような雰囲気が面白く感じて、二回、三回と参加しているうちにちょっと慣れてきて余裕が出るっていうんですかね。女性の方って、けっこうそのあたり敏感じゃないですか。余裕がなさそうな自信がなさそうなというのは表面的なものにはなるんでしょうけど見抜いてくるじゃないですか。何回か参加しているうちに女性の方とも連絡先を交換できるようになってきたんですよ。
ーー最初は異性より、会場の空気感に惹かれた?
そうですね。うまくいかなくてあぶれた男性同士で固まって傷のなめあいとでも言いますか、男性同士で情報交換したりも自分は結構楽しめちゃう方で、最初の方はオス味を出していく方向性でも特になかったんですよ。会社でも家庭でもない、第三の居場所みたいな。サードプレイスっていうんでしたっけ。そんな感覚で心地よい感じもありましたね。だから私は、最初の二年間くらいは会で連絡先交換した女性とは当たり障りのないLINEのやり取りをするくらいで大体自然消滅していましたし、誰とも個人的に会っていません。
ーー意外ですね。
その頃は「こういう楽しみ方が王道だよね」くらいに思ってたんですが、三年目くらいに知り合った女性の方で、ちょっと引くくらいグイグイきてくださる方が同時期に二人かぶったんですよね。それでどちらもいい感じになるということがありまして。人のせいにしてるみたいでこういう言い方はあまりしたくなんですが、そこですっかりスイッチが入ってしまったというか、イケるじゃん俺みたいなそんな楽しみ方を覚えてしまったんです。人って一つ成功体験ができると、次もイケるんじゃないかみたいなどんどん欲が出てくるというか。予定が少しずつ増えていって、その頃にはもう発想が変わっていました。
ーーどう変わったんですか?
いわゆる多頭飼い的な楽しみ方が普通の楽しみ方だよねみたいな。週に三日は誰かと会う時間を設けてそれぞれ時間を過ごす。連絡もそれぞれ違う時間帯。誕生日も全部メモしてある。たまに狩りに出かけようとする時でも事前に把握している鉢合わせしそうな日は避ける。自分では完璧だと思っていました。今思えば、その”管理できている”感がオスとしての本能といいますか自己肯定感を爆上げしてたんですよ。
ーー具体的にはどれくらい交流があったのでしょう。
時期によって違いますが、一番多い時は定期的に連絡を取る相手が七人いました。その頃は、一人ひとりとの時間を大切にしているつもりでしたが、結局は、キャパオーバーしていて自分の予定表しか見ていなかった。自分が回せるかどうかだけを考えていたんです。
ーー何か違和感を覚える瞬間はありませんでしたか?
男性が思っている以上に横の情報が流れています。こういう人が来ていた。こういう話をする人がいた。最近見かけない。あの人はどこのサークルにもいる。そういう情報は、自然と共有されるっぽいんですよね。実際には、違うサークルで会った女性でもどこかでつながっている。後になって考えれば、いずれ破綻するのは目に見えてますよね。
ーー横のつながり、いわゆる女性同士の情報網ですね。
ですね。ある時、女性のLINEグループのスクリーンショットを偶然見せてもらう機会があって、青ざめましたよ。見せてくれた方は、そこでやり玉に挙がっているのは私だとは気づいていなかったからこそそれを見せてくれたわけですが、私が「仕事で忙しくて」と断った日の夜、別の女性と飲んでいたことが完璧に特定されていたんです。私が誰とどこで飲んでいたか、どのサークルに出没しているか、男性側の言動やLINEの文面まで共有されていて、まさに指名手配犯状態。自分ではうまく隠しているつもりでも、女性陣からすれば手のひらの上で踊らされていたようなものだったんです。
ーー実際はどうだったのでしょう。
後から分かったことですが、そのグループLINEでやり取りをしていた女性同士は以前、別のサークルで何度か同席したことがあったそうです。親友ではありません。でも顔を見れば分かる程度の知り合い。その程度のつながりでした。問題はそこからです。「あの人、どこかで見たことある。」そんな一言から会話が始まり、参加したイベントの話になり、「あの人、あそこにも来てたよ。」という情報が自然と積み重なっていった。誰かが悪意を持って探ったわけではありません。ただ雑談をしていただけなんです。でも、コミュニティというのは、そういう何気ない会話の積み重ねで輪郭が見えてきます。
ーーつまり、誰か一人が暴いたわけではない。
そうです。私は勝手に、「秘密は一人ずつ守れば大丈夫。」と思っていました。でも実際は違った。一人ひとりは秘密を守っていても、人と人がつながれば全体像が見えてしまうんです。今思えば、本当に単純なことでした。
ーーその後、参加は続けられたのでしょうか。
それまでに連絡取っていた7人はその間に全滅しましたので、ほとぼりが冷めるまで1年くらい間を開けましたね。そして参加するのは〇〇〇〇のみ。あそこは運営が微妙で、参加者が常連化しないので初参加が多いんですよ。なのでそこに絞って半年に一度くらいの参加に減らし、同時進行するのは同時に二人までという新ルール。既婚者サークルって大体半年くらいで頻繁に参加する層が入れ替わる感覚がありますので、今のところうまく回ってますが、結局あまり反省してないですよね。
ーー長く参加してきたからこそ見えたこともありますか?
あります。常連になるほど、「この人は安全。」「この人なら大丈夫。」そんな思い込みが生まれます。でも、人間関係に”絶対”はありません。新しい参加者も来ますし、別の主催会社へ参加する人もいます。人は思っている以上につながっています。だからこそ、長く参加するなら、誠実に振る舞うのが一番楽ってことですかね。
~~既婚者サークルに本当に長く居心地よく参加されている方を見ていると、共通しているのは話術でも容姿でもありません。相手への配慮があり、噂話に流されず、誰に対しても同じ態度で接すること。派手さはなくても、そういう方は自然といいご縁があったりする感じですよね。
ゴレイヌさんに関しては、懲りているのか懲りていないのかイマイチ微妙なところではありますが、女性側の多頭飼い化が進む中、男性側もいろいろ楽しみ方が多様化しているって感じかもしれません。なおゴレイヌさんはキオクシアを天井でつかんだらしく大損したとのことで、天罰覿面ですよね。皆様のより良きコミュニケーションの一助になれば幸いです。
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