ご覧いただきありがとうございます、小林です。
今回は以前、前編・後編の2回に分けてご紹介した「桜木さん(仮名・44歳女性)」のお話を、再構成版としてお届けします。
内容としては、何かお金を取られたとか、危険な目に遭ったとか、そういう深刻なトラブルではありません。むしろ、既婚者サークルに何度か参加している方なら「これ、ちょっとわかるかも」と感じる可能性のある、非常に微妙な人間関係のお話です。
既婚者サークルという場所は、基本的には初対面の男女が集まって話をする場です。男性と女性が出会う場所ではありますが、実際に参加してみると、意外と女性同士の関係も生まれます。特に一人参加した女性同士が意気投合すると、その場で連絡先を交換して、その後一緒に別の会へ行ったり、「今度この会行ってみない?」なんて誘い合ったりすることもあります。
これは男性同士ではそこまで頻繁に起こらない現象だったりします。男性の場合、会場ではかなり盛り上がっていても、会が終われば「じゃあまたどこかで」というくらいで終わることも多い。一方で女性同士の場合は、そこから友人関係のようなものに発展するケースがあります。
今回の桜木さんも、まさにそんな流れから始まりました。
桜木さんは、当時すでに2~3回ほど既婚者合コンに参加していました。まだベテランというほどではありませんが、「だいたいこんな感じなんだな」ということが少しわかってきた頃です。
あるとき、以前同じテーブルになったH美さんという女性と連絡先を交換しました。H美さんは社交的なタイプだったそうで、桜木さんとも普通に話が合い、その後もLINEでやり取りするようになったとのこと。そしてある日、H美さんからこんな誘いが来ました。
「今度、一緒に既婚者合コン行かない?」
桜木さんとしては、ちょうど気になっていた会だったものの、一人で参加するには少し勇気が必要だったので、一緒に行ってみようかなとなったわけです。
ここまではわりとよくあるといいますか、普通です。むしろ、こういう「知り合いに誘われて参加してみる」というのは、初参加のハードルを下げる意味でも悪くありません。
桜木さん自身も、いつも一人参加だったので、この日は少し新鮮な気持ちだったそうです。前日にはネイルに行き、当日は少し早めに家を出る。
そしてH美さんとは、会場の最寄り駅ではなく、そのひとつ手前の大きなターミナル駅で待ち合わせることになりました。開始の1時間ほど前に待ち合わせて、スターバックスでお茶をしながら、
「今日はいい人いるかな」
「どんな人来るんだろうね」
「もし気になる人がかぶったらどうする?」
などと、いわゆる女子会的な会話をしながら時間を過ごしたそうです。
この時点では、桜木さんもかなり楽しみにしていた。
ところが、会場に到着してから、少しずつ話が変わってきます。受付を済ませ、女性3人で座るテーブルに案内されました。
桜木さんは、3席のうちの一つは知らない女性が座るとばかり思っていたので、もう一人の女性が来たときには「その人が孤立感感じないように気を付けよう」とか思っていたそうです。
ところが、その女性が席に着くなり、
「H美、久しぶり~!」
となった。どうやら、その女性もH美さんに誘われて参加した方だったようです。つまり、H美さんを中心に、桜木さんともう一人の女性が集められたような形になっていました。
ここからが今回のポイントです。
桜木さんは、そのもう一人の女性について何も聞かされていませんでした。もちろん「友達を連れてくるな」と言いたいわけではありません。
ただ、自分としては「H美さんと二人で参加する」という認識だった。ところが実際には、H美さんには別の友人がいて、その友人も誘われていた。
そして会が始まる前から、H美さんとその友人は昔からの知り合いらしく、二人の会話がどんどん進んでいきます。
桜木さんも会話には入ろうとしたものの、どうしても二人にしかわからない話が増えていく。これ、経験したことがある方ならわかると思うんですが、3人という人数は意外と難しいんですよね。
2人なら当然会話が成立します。3人でも全員が初対面なら、それぞれが気を遣うので案外うまくいく。
ところが、「仲のいい2人+そこに入った1人」になると、一気に難易度が上がる。しかも既婚者合コンの場合、その後に男性3人が入ってくるわけです。
そして桜木さんは、さらにもう一つの違和感を感じることになります。席の位置です。女性3人の並びで、桜木さんとH美さんの間に、H美さんの友人が座る形になりました。
これが地味に効いてきます。男性が3人、女性が3人。当然、男性は女性それぞれと話します。H美さんは社交的で、男性から見ても華のあるタイプだったそうです。
すると、テーブルの端にいる桜木さんからすると、男性がH美さんとその友人のところで会話しているように見える。自分だけ少し離れた場所にいる。
せっかく「一緒に参加しよう」と誘われたのに、気がつけば一人参加したときと同じような状態になっていたわけです。桜木さんとしては、
「だったら私、一人で来たほうがよかったじゃん」
という話になります。そして、ここで桜木さんは受付時のある会話を思い出します。H美さんは、主催者の方ともかなり親しい様子だったそうです。受付のとき、主催者からH美さんに、
「H美ちゃん、ごめんね。お友達連れてきてくれて助かる~」
というような声掛けがあった。そのときは特に気にしていなかった。ところが、会場で自分がほとんど会話に入れない状態になってみると、その言葉が妙に引っかかってきた。
「ごめんね?」
「助かる?」
確かに、言われてみれば少し不思議です。
普通なら「お友達連れてきてくれてありがとう」と言うところでしょう。それが「ごめんね」「助かる」。
そこで桜木さんの中に、ある疑念が生まれます。もしかしてH美さんは、私と仲良くするために誘われたんじゃなくて、単純に人数合わせとして呼ばれたんじゃないか。
もちろん、これは桜木さん側から見た推測です。
H美さんが本当にそういう意図だったのかは、本人に聞かなければわかりません。単純に「一緒に行ったら楽しそうだから」と思って誘っただけかもしれない。
もしかすると、主催者から「あと一人女性がいると助かる」と頼まれていたのかもしれない。あるいは、その両方だったのかもしれません。
ただ、当事者としては、そんなことを考えてしまう状況になってしまった。そして一度そう思い始めると、いろいろなことが気になってきます。
「私、引き立て役として連れてこられた?」
「華のあるH美さんの隣に、私みたいな普通の人を置いておくとH美さんが目立つ?」
「人数合わせとしても便利、引き立て役としても便利。私、超便利じゃん」
桜木さん自身、そんなふうに思ってしまったそうです。ここまで来ると、もう会を楽しむどころではありません。
これが人間関係の嫌なところで、一度「自分は利用されているのでは?」と思ってしまうと、相手の普通の行動まで疑わしく見えてしまいます。
そして、さらに追い打ちをかけるような出来事がありました。桜木さんにも、積極的に話しかけてくれる男性がいたそうです。これは桜木さんとしてもありがたかった。
ところが、そういうタイミングに限ってH美さんが会話に入ってくる。そして、いつの間にか会話の中心がH美さんに移ってしまう。
もちろん、これもH美さんからすれば普通の会話だったのかもしれません。本人としては「みんなで話している」くらいの感覚だった可能性もあります。
でも、桜木さんからすると、「せっかく私に話しかけてくれたのに……」となる。これが何度か続けば、さすがに気持ちは萎えてしまいます。
結局、桜木さんは最後まで参加しました。途中で帰るという選択肢も簡単には取れません。
ただ、楽しかったかと聞かれれば、答えは当然違う。「誘われて参加したことを後悔した」これが率直な感想だったそうです。
そして、話を聞き終えた私に、「あ~、スッキリした」とおっしゃっていました。既婚者サークルの話というのは、なかなか人に相談できません。普通の友人にこの話をしても、そもそも状況説明から大変です。夫や妻に相談するわけにもいかない。だからこそ、こういう小さなモヤモヤが本人の中に残ってしまう。
そして今回の桜木さんのケースで、私が改めて感じたのは、「一緒に参加する」ということが必ずしも「一緒に楽しめる」という意味ではない、ということです。むしろ、既婚者合コンの場合は、誰と一緒に行くかによって、自分の立ち位置が変わってしまうことがあります。
特に、すでにその会に知り合いが多い人、主催者と親しい人、参加者の中で目立つ人と一緒に行く場合、自分がその人の人間関係の中に入ることになります。
それが心地よい場合もありますが、今回のように「自分だけ外側にいる」という感覚になる場合もあるしますし、厄介なのが相手に悪意があるとは限らないことです。
H美さんが本当に桜木さんを人数合わせとして利用したのか、引き立て役として連れてきたのか、それとも単純に友達を増やしたかっただけなのか、真相はわかりません。
でも、人間関係というのは「相手に悪意があったかどうか」だけで決まるものでもないんですよね。悪意はなくても、相手への配慮が足りなければ、結果として相手を傷つけることはあります。
逆に、本人としては普通にやっていることでも、受け取る側には「利用された」と感じられることもある。既婚者サークルのように、初対面の人が短時間で交流する場所では、こういう小さなズレが起きやすいのだと思います。
特に女性同士で一緒に参加するときは、「一緒に行くから安心」というメリットがある反面、「その友達の人間関係に巻き込まれる」というリスクもある。自分自身でもその場を楽しむ準備をしておくくらいがちょうどいいのではないかと思います。
もちろん、これは「一人参加が正義」という話ではありません。一人で行っても緊張する人はいますし、知り合いがいることで安心して参加できる方もたくさんいます。
ただ、「一緒に行く=常に自分の味方として隣にいてくれる」とは限らない。ここだけは頭の片隅に置いておいてもいいのかなと思います。
既婚者サークルは、結局のところ人間関係の縮図みたいなところがあります。気の合う人もいれば、なんとなく苦手な人もいる。親切な人もいれば、無意識に人を振り回してしまう人もいる。そして、本人にはまったく悪気がないのに、別の人から見ると「ちょっと嫌だったな」と感じることもある。
だからこそ、こういう話を「H美さんが悪い」「桜木さんが考えすぎ」と単純に片付けてしまうのも違う気がします。今回の件も、H美さん本人に聞けばまったく違う話になる可能性がありますが、せっかく楽しみにしていた会が嫌な思い出になってしまったことは事実として残ります。
そして最後に、桜木さんが「報告は以上です。あ~スッキリした」と言っていたのが、今回の話を象徴しているような気がしました。結局、既婚者サークルのトラブルって、ものすごく大きな事件だけがトラブルではないんですよね。こういう、誰にも言えない小さなモヤモヤのほうが、実はたくさん転がっている。
そして、そういう小さなモヤモヤほど、本人の中ではなかなか消えてくれない。だからこそ、今回のように誰かに話してみるだけでも、少し気持ちが整理されることはあるのだと思います。
既婚者サークルは、あくまで人と人が出会う場所。楽しい出会いもあれば、ちょっとした人間関係のズレもある。それも含めて「こういうこともあるんだな」と知っておけば、同じような場面に遭遇したときに必要以上に傷つかずに済むかもしれません。
皆様の今後のより良きコミュニケーションの一助になれば幸いです。
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